4つの物語

今夜の献立考えなくちゃ。あの子の宿題見てあげなくちゃ。仕事のメールも放ってきちゃった……。ワーキングマザーはいつだって、時間に追われている。昨日だってそう。仕事のことでいっぱいで、息子の遠足のお弁当のことをすっかり忘れていた。支えてくれる誰かが欲しい。そう思う時、私はついついあの店に寄ってしまう。これまでは、車を10分走らせないと夜遅くまで開いているスーパーはなかったけれど、最近住宅街にできたあそこなら、歩いて5分で何でも揃う。頼りたい時に頼れる場所がある。それってすごく幸せだと思う。

“今度この街にやってきたマックスバリュエクスプレスです。あなたの願いを叶えます。” そんな風に書いたチラシを配ったのは、もうかれこれ半年も前のこと。あれから季節が移りゆき、私はいつの間にかこの街の住人になっていた。あのおばあちゃんは今日も元気に来てくれるかな。あの三姉妹は今日も笑顔を見せてくれるかな。そう考えるだけでワクワクする。この街は小さい。だけどみんなが一生懸命生きている。そんなみんなの役に立ちたいと、願う気持ちはあといくつ季節を越えても変わることはないだろう。

今度の日曜は何時集合だっけ?あの出し物は決まった?笑顔で話しかけてくる人たちは、みんなこの店の常連さん。私に聞かないでよなんて、今では冗談も言い合える仲になったことを、あの頃の私は想像もできなかった。この街が大好きで、この街と関わりたくて、無我夢中で走り回った日々。この店には今、街のすべてが詰まっている。こんなこと、誰かが聞いたら笑うだろう。だけど私は胸を張って言いたい。だれよりもこの街を愛し、盛り上げたいと思い、街の隅々まで見て回ったことを。今日もこの街は走り続けている。この店と共に。

あの味噌買った?あのお酢買った?流行りの商品が登場すると、いつも私たちはあの店に駆け込む。主婦の興味が持続するのは1週間。それを知ってか知らずか、そこにはいつも話題の商品が山積みになっている。ついでに売場を散策すれば、まだ見ぬ新商品に出会えるし、新たな調理方法だって見つけることができる。ただのスーパーなのに、仲間内ではあの店がちょっとした先生。そんな店があるなんて、幸せなことだと私はいつも夫に話している。今日はどんなアイディアを私にくれる?浮き足立つ気持ちを抑えきれず、今日も私はあの店にゆく。